ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

18時過ぎの食品売り場は混んでいる。

特に今日は金曜日。

週末くらい楽したいと思うのだろう。

主婦たちで賑わっていた。


「食べたい物、どれでもいいから選べ」


実松くんの大きめの声が耳元で聞こえた。

ショーケースの中には色とりどりのお惣菜が所狭しと並んでいる。

どれも美味しそうで目移りしてしまう。


「よし!買って来る!」


実松くんの色気ある誘いを払うように、あえて大きな声で答え、人混みの中へと進んだ。


それから20分後。


「主婦パワー、ハンパない」


タクシーに乗り込んだ実松くんはため息混じりにそう言った。


「ちょうどタイムセールが始まっちゃったからね」


タイムセールが好きな私はなんのその。

そのせいで、手を繋いでいた実松くんは振り回され、人の波に押されて結局、離れ離れになってしまい、私を探し回った実松くんはどっと疲れたようだ。


「よく買えたな」


割安だから、と両手いっぱいに食材を買い込んだ私を見て、実松くんは驚いていた。


「金、払うよ」


鞄からお財布を取り出そうとした実松くんの手を止める。


「いいよ。ずっとご馳走になりっぱなしだから。このくらい、ご馳走させて。今日は元々、私が払うつもりでいたし。それに対等でいたいから」


はっきり言えば、実松くんは鞄を足元に置いた。

でも、やはり不満なのか、途中でタクシーを止めると、ケーキ屋さんに入り、ケーキを買って来た。

< 61 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop