ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
18時過ぎの食品売り場は混んでいる。
特に今日は金曜日。
週末くらい楽したいと思うのだろう。
主婦たちで賑わっていた。
「食べたい物、どれでもいいから選べ」
実松くんの大きめの声が耳元で聞こえた。
ショーケースの中には色とりどりのお惣菜が所狭しと並んでいる。
どれも美味しそうで目移りしてしまう。
「よし!買って来る!」
実松くんの色気ある誘いを払うように、あえて大きな声で答え、人混みの中へと進んだ。
それから20分後。
「主婦パワー、ハンパない」
タクシーに乗り込んだ実松くんはため息混じりにそう言った。
「ちょうどタイムセールが始まっちゃったからね」
タイムセールが好きな私はなんのその。
そのせいで、手を繋いでいた実松くんは振り回され、人の波に押されて結局、離れ離れになってしまい、私を探し回った実松くんはどっと疲れたようだ。
「よく買えたな」
割安だから、と両手いっぱいに食材を買い込んだ私を見て、実松くんは驚いていた。
「金、払うよ」
鞄からお財布を取り出そうとした実松くんの手を止める。
「いいよ。ずっとご馳走になりっぱなしだから。このくらい、ご馳走させて。今日は元々、私が払うつもりでいたし。それに対等でいたいから」
はっきり言えば、実松くんは鞄を足元に置いた。
でも、やはり不満なのか、途中でタクシーを止めると、ケーキ屋さんに入り、ケーキを買って来た。