ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「どれも美味しいね」
「そうだな。たまにはこういうのもいいな」
ということは、実松くんは普段、惣菜を買ったりしないということだろうか。
「いつもは自炊してるの?」
「あぁ。料理、結構好きなんだよ。千葉もやるよな?この前作り置きしてくれてた料理、全部美味かったもんな」
風邪の時に作った料理、食べてくれたらしい。
「口に合って良かった」
「今度は俺が作るよ。なにが食べたい?」
そう聞かれても今はお腹いっぱいで、これというものが思い付かない。
返事を保留にすると、実松くんはニコリと笑った。
「俺が食べたいもの作ればきっと、お前も気に入ってくれるよな?」
「そうかもね。なに作ってくれるのかな?食べたいもの、ってたとえばなに?」
質問を返すと、実松くんは私の方を指差した。
「ん?なに?コロッケ?」
ちょうど手にしていたのがコロッケだったので、そう言うも、首を左右に振られた。
「じゃあ、なに?」
「恭子」
名前で呼ばれてドキッとする。
「恭子が食べたい」
低く、艶のある声で言われて。
すぐにはなにを言われたのか分からなかったけど、時間が経つにつれて、とんでもないことを言われたと、みるみる顔が熱くなる。