ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「わぁ!美味しそう!」


実松くんが途中で買ってきてくれたケーキ屋さんの箱の中には色とりどりのケーキが三種類、全部で六個入っていた。

綺麗で美味しそうなケーキに、お腹がいっぱいだったことを忘れて飛びつく。

そんな私を見て、実松くんが笑った。


「子供みたいだな」

「いいの。それより実松くんはどれにする?」


聞くと実松くんは迷うことなく、三個ずつ、お皿に乗せた。


「食べきれるかな」

「食べられなければ冷蔵庫に入れておいて明日食べればいいよ。明日、仕事休みだよな?」


それはつまり、泊まっていけと言っているのだろうか。

心も体も身の回りも、準備が出来ていないのに。


「そんなに、したい?」


直接的な物言いに、実松くんは驚き、目を見開いた。

でも、何度も何度も意味深なことを言われて、その度に頭を悩ますのは嫌だった。


「私、恋愛初心者だから、もう少し時間が欲しい」

「分かってるけど?」


あっけらかんとした答えに、今度は私が驚く。


「なんだよ、その顔」


笑われても、実松くんの考えに理解が追い付かず、怒るに怒れない。


「何度かけしかけてたよね?」


違うのかと思って確認を取る。


「違う?私の勘違い?」

「勘違いじゃないな。触れていいならいくらでも触りたいから」


そんな風に言われて、真っ直ぐ見つめられると、ドキドキして、どうしていいか分からなくなる。

見兼ねた実松くんが視線をカップに下げた。

< 65 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop