ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「わぁ!美味しそう!」
実松くんが途中で買ってきてくれたケーキ屋さんの箱の中には色とりどりのケーキが三種類、全部で六個入っていた。
綺麗で美味しそうなケーキに、お腹がいっぱいだったことを忘れて飛びつく。
そんな私を見て、実松くんが笑った。
「子供みたいだな」
「いいの。それより実松くんはどれにする?」
聞くと実松くんは迷うことなく、三個ずつ、お皿に乗せた。
「食べきれるかな」
「食べられなければ冷蔵庫に入れておいて明日食べればいいよ。明日、仕事休みだよな?」
それはつまり、泊まっていけと言っているのだろうか。
心も体も身の回りも、準備が出来ていないのに。
「そんなに、したい?」
直接的な物言いに、実松くんは驚き、目を見開いた。
でも、何度も何度も意味深なことを言われて、その度に頭を悩ますのは嫌だった。
「私、恋愛初心者だから、もう少し時間が欲しい」
「分かってるけど?」
あっけらかんとした答えに、今度は私が驚く。
「なんだよ、その顔」
笑われても、実松くんの考えに理解が追い付かず、怒るに怒れない。
「何度かけしかけてたよね?」
違うのかと思って確認を取る。
「違う?私の勘違い?」
「勘違いじゃないな。触れていいならいくらでも触りたいから」
そんな風に言われて、真っ直ぐ見つめられると、ドキドキして、どうしていいか分からなくなる。
見兼ねた実松くんが視線をカップに下げた。