ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「なにしてんだよ」
呆れる実松くんを無視して話を続ける。
「とりあえず、校庭の裏から探し始めたの。で、その時、野球部に入ってた志摩くんが、外野に飛んだ野球ボールを取りに来たのが出会ったきっかけ」
もっとも、志摩くんのことは小学生の頃から知っていたし、何度か話したことはあった。
ただ、異性として意識したことはなかったし、さほど仲良くもなかった。
その時は志摩くんよりアリ地獄に興味があったし。
だから私は、志摩くんに、先程実松くんに聞いたように、唐突にアリ地獄を見たことがあるか、と質問した。
『あるよ』
「待て。もしかしてそれだけで惹かれたのか?」
「そんなわけないでしょ」
ただ、本物を見たことがある志摩くんなら、アリ地獄がありそうな場所を知っているだろうと思った私は、志摩くんに詰め寄り、情報を集めることにした。
それがきっかけで会話をするようになって、一緒に部活をサボってアリ地獄を探すようになって、ふたりだけしか知らない、ふたりだけの時間が増えていき、少しずつ距離が縮まっていった。