ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「千葉が俺から離れないっていう保証が形式上だけでも欲しいんだ、って、こんなこと言わせんな」


くるりと背を向け、洗い物に取り掛かった実松くん。

その背中は寂しげで、私がいかに実松くんを不安にさせているかを痛切に感じた。


「ごめん」


申し訳ない気持ちでいっぱいな私は、実松くんの背中に額を付けて、気持ちを言葉にする。


「離れないよ。絶対に」


自分から好きになったのは志摩くんだけど、伝えてもらった想いに応えたいと思ったのは実松くんだけ。

結婚に関しては現実味がない。

それでも、嫌だとか、重いとか全く思わない。

嫉妬されることで、寂しげな実松くんを見るのは胸が痛むけど、それと同じくらい嬉しいんだ。


「私は確実に実松くんに惹かれているんだよ」


「なら、証明してみせて」


実松くんはそう言うと、振り返って私を見下ろした。


「俺を好きだって証明してみせて」

「どうやって?」


そう聞いても、実松くんは答えてくれない。

自分で考えろ、ということなのだろう。

実松くんに対する気持ちが愛情であることを。

それなら、と意を決して実松くんの胸に飛び込む。


「足りない」


冷たく言われて、体を離す。


「じゃあ、目、閉じて」


そう言えば、実松くんは素直に目を閉じた。

目の前にある綺麗な顔。

その頬を撫で、それから唇を当てた。


「これで、分かってくれた?」


恥ずかしさを堪えながら聞くと、実松くんはゆっくりと目を開け、私を見て笑った。

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