ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「顔、真っ赤」

「見ないでよ」


顔を背けるも、実松くんの手が私の頬に添えられ、そしてそのまま顔が頬に近付き、キスを返された。


「頬にキスするのが、千葉の愛情表現なんだろ?」


意地悪く言う実松くんの顔を手で押し退けるも、その手は簡単に取られてしまう。


「離して」

「ダメ。今度は俺の番」


そう言うと、実松くんはゆっくりと唇にキスをした。

ほんの一、二秒。

唇が離れ、目をゆっくり開ける。

すると至近距離で視線が交差した。

実松くんの綺麗な瞳を左、右、と見つめる。

その直後、またキスされた。

今度は軽いキスを角度を変えて何度も。

それから唇を強く押し当てられ、チュッというリップ音が立つほど、強く吸われた。


「まだ…全然足りない」


額と額をくっ付ける程の距離にいる実松くんは、掠れた声でそう言うと、私を熱っぽく見つめた。


「恭子」


名前を呼ばれてドキッとする。

それを見透かされないように視線を泳がす。

でもまたキスをされたことで、反射的に目を閉じた。


「…んっ!ちょっと…待っ…」


さっきと打って変わった激しさのあるキスは、私が口を開けた瞬間を狙って舌が中へと入り込んでくる。

実松くんの舌が口腔内を弄ぶ。


「ん…あ…」


声が漏れてしまった。

恥ずかしくて、顔を背けると、互いの唾液が唇に残った。

それを実松くんの指が拭い、私に視線を据えたまま、指を舐めた。

そのあまりにも色っぽい仕草と視線に、恋愛未経験者の私が付いていけるはずがなく。

下肢の力が抜けて、その場にしゃがみ込んでしまった。


「大丈夫か?」


実松くんが心配そうに私を覗き込む。

その目にはあの熱っぽさはなかった。
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