ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

手を借り、立ち上がり、ソファーに座る。

でも、ドキドキと早く打ち付ける鼓動はなかなか収まらない。

そんな私を実松くんは優しく抱き締めてくれた。


「ごめんな。余裕なくて。でも分かってもらえた?俺がどれだけ恭子のこと好きか」

「うん。うん」


二度と頷くと、実松くんはさらに強く抱き締めてきた。

押し付けられた胸元に頬を寄せる。

そこから聴こえてきた鼓動音の早さに、実松くんの言葉の裏付けが取れた気がして、口元が緩んだ。


「このままだと押し倒しそうだから今日はもう送って行くよ」


体を離されると寂しささえ覚える。

加速的に惹かれてる実感がした。


「そうだ。明日は会える?」


車を発進させてまもなく、運転席に座る実松くんが言った。


「ごめん。明日は建築現場に行かなきゃいけないんだ」

「そっか。休みなら部屋のインテリア見に行こうと思ってたんだよな。ほら、殺風景だ、って言ってただろ?」


そういえばそんなことを言ったな、と思い出した。

でも今日は考えもしなかった。

きっと実松くんと一緒にいたからだろう。

ふたりならどんなに寂しさのある部屋でも温かくいられるのだ。

短期間でそのくらい気持ちに変化が出来ている。

となると、この先、私は身が持つのだろうか。

実松くんナシじゃ、生きていけない、とかになったら怖い。

別れないという保証が形式だけでも欲しいと言った実松くんの言葉を身に染みて感じた。


「じゃあ、また連絡する」


自宅アパートの前まで送ってもらった。


「道中、気を付けてね」


シートベルトを外し、ドアノブに左手をかける。

でも、右腕が掴まれたので振り向く。

すると実松くんの顔が近付いてきていて、唇に軽くキスされた。


「おやすみ。じゃ、また明日な」

「あ、う、うん。また明日。おやすみなさい」


不意打ちのキスにドキドキさせられた。

今日、一体、何度この感覚を味わっただろう。

恥ずかしいけど口元が緩む感じに、恋をしている実感が湧いた。
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