ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
現在と過去
週が明けても、恋する気持ちは薄れない。
ふとした瞬間に実松くんのことを思い出しては頬が緩む。
「幸せそうでいいわね」
平井さんがコーヒーを入れてくれた。
「ありがとうございます」
お礼の言葉も、いつもより弾む。
それに対して平井さんは苦笑した。
「実松くんもさぞ幸せでしょうね…って、噂をすれば」
入り口の扉の方を見た平井さんの視線を追うと、そこには実松くんの姿があった。
いつも通りのスーツ姿。
それなのにいつもよりカッコよく見えるのは恋をしているから。
胸もドキドキしてる。
恥ずかしくて俯いてしまうのに、口元はやっぱり緩んでしまう。
そんな私を知ってか知らずか。
いつのまにか入って来ていた実松くんは、私の頭をポンと叩いた。
「おつかれ」
いつもと同じ感じに声を掛けられ、ドキドキしていた胸が、少しだけ冷静さを取り戻す。
「おつかれ様」
見上げて答えると、柔らかな笑顔が向けられた。
その瞬間、また鼓動が加速する。
視界の端に平井さんのニヤニヤした顔が入らなければ私もにやけてしまっただろう。
視線を外し、平井さんが入れてくれたコーヒーを飲むことで気持ちを抑え込む。
「お、実松。今日はどうした?」
ちょうどお手洗いから出て来た安藤さんが私の側に立っている実松くんに声を掛けた。