ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
未来へ
志摩くんから参加の連絡をもらった二週間後の日曜。
9時に実松くんが車で迎えに来てくれた。
「今日はよろしくお願いします」
目的は志摩くんのマリッジブルーからの脱却。
同級生の、しかも初恋相手の問題に、実松くんを巻き込んでいることを申し訳なく思いつつ、車に乗り込む。
「俺たちが気負いする必要ないんだから。楽しめばいいさ」
明るい実松くんの声と笑顔に救われる。
小さく頷いて見せると、実松くんは早速、ホテルへと車を走らせた。
「そういえば、知り合いってウェディングプランナーなの?」
気になっていたことを車中で聞く。
「いや、プランナーではないよ」
実松くんはそう言うと、知り合いは中村さんという名前で、高校からの付き合い。
若いのに、次期支配人に名乗りを上げているほど有能な人ということを教えてくれた。
「俺もブライダルフェアに誘われた時はプランナーやってるのかと思ったんだけど、フェアに参加する人数が少ないことを同僚に相談されて声掛けてるって言ってた」
「フェアに行って参加者が少なかったら『ここ、人気ないのかな?』って思うもんね」
実際、知り合いに声を掛けているとなると、人気ないのかもしれない。
でもそれは違った。
到着したのは誰もが一度は耳にしたことのある有名なホテル。
著名人が式を挙げるような場所は挙式だけでなく、宿泊費も相当な額だ。
たとえ無料のフェアだとしても、敷居の高いこのホテルには簡単に上がれるものではない。
もちろん、それは想像に過ぎない。
実際はリーズナブルなプランもある。
だけど、入り口に立った時点で「高級」と決め付けている私は、腰が引けてしまう。
コートの下には黒のニットワンピースを着てきた。
でももう少しドレッシーな服装にすれば良かったと後悔している。
「ほら、行くぞ」
何の気負いもない様子で、堂々と入って行く実松くんを恨めしく思いつつ、実松くんの影に隠れるように付いていく。
するとエントランスの高い天井が目に飛び込んできた。
「うわぁ。すごい」
職業柄、建造物に目が行く。
エントランスのど真ん中でぐるりと天井を見回す。
何度も、何度も。
とても変な客だろう。
でも、歴史ある建物に目が奪われていた。
そんな折、遠くから声が聞こえた。
「実松!」
その声に視線を前に向けると、そこには黒縁メガネが特徴の、ブラックスーツに身を包んだ長身の男性が立っていた。
「紹介するよ。コイツが中村。で、こっちが恭子。俺の彼女」
「はじめまして。千葉です」
実松くんの紹介に続いて頭を下げると、中村さんはニコリと微笑んだ。
「はじめまして。中村です。お会い出来て光栄です」
手を差し出されたので、それを取ろうとすると、実松くんに止められた。
「触るな。俺のだから」
「へぇ。独占欲丸出しだな。それだけ彼女は特別ってことか。まぁ、初めてだもんな」
「初めてって?」
中村さんの言葉の意味を教えて欲しいと伝わるように実松くんの方を見ると、中村さんが答えてくれた。
「今までもフェアに何度か誘っていたんです。でも、彼女に期待させたくないからって断られていたんですよ。あなたには期待させたいのでしょうね」
「今日は違うんだよ。こっちにも色々事情があるんだ」
含みのある言い方に中村さんの眉が少しだけ上がった。
でも、それもつかの間。
9時に実松くんが車で迎えに来てくれた。
「今日はよろしくお願いします」
目的は志摩くんのマリッジブルーからの脱却。
同級生の、しかも初恋相手の問題に、実松くんを巻き込んでいることを申し訳なく思いつつ、車に乗り込む。
「俺たちが気負いする必要ないんだから。楽しめばいいさ」
明るい実松くんの声と笑顔に救われる。
小さく頷いて見せると、実松くんは早速、ホテルへと車を走らせた。
「そういえば、知り合いってウェディングプランナーなの?」
気になっていたことを車中で聞く。
「いや、プランナーではないよ」
実松くんはそう言うと、知り合いは中村さんという名前で、高校からの付き合い。
若いのに、次期支配人に名乗りを上げているほど有能な人ということを教えてくれた。
「俺もブライダルフェアに誘われた時はプランナーやってるのかと思ったんだけど、フェアに参加する人数が少ないことを同僚に相談されて声掛けてるって言ってた」
「フェアに行って参加者が少なかったら『ここ、人気ないのかな?』って思うもんね」
実際、知り合いに声を掛けているとなると、人気ないのかもしれない。
でもそれは違った。
到着したのは誰もが一度は耳にしたことのある有名なホテル。
著名人が式を挙げるような場所は挙式だけでなく、宿泊費も相当な額だ。
たとえ無料のフェアだとしても、敷居の高いこのホテルには簡単に上がれるものではない。
もちろん、それは想像に過ぎない。
実際はリーズナブルなプランもある。
だけど、入り口に立った時点で「高級」と決め付けている私は、腰が引けてしまう。
コートの下には黒のニットワンピースを着てきた。
でももう少しドレッシーな服装にすれば良かったと後悔している。
「ほら、行くぞ」
何の気負いもない様子で、堂々と入って行く実松くんを恨めしく思いつつ、実松くんの影に隠れるように付いていく。
するとエントランスの高い天井が目に飛び込んできた。
「うわぁ。すごい」
職業柄、建造物に目が行く。
エントランスのど真ん中でぐるりと天井を見回す。
何度も、何度も。
とても変な客だろう。
でも、歴史ある建物に目が奪われていた。
そんな折、遠くから声が聞こえた。
「実松!」
その声に視線を前に向けると、そこには黒縁メガネが特徴の、ブラックスーツに身を包んだ長身の男性が立っていた。
「紹介するよ。コイツが中村。で、こっちが恭子。俺の彼女」
「はじめまして。千葉です」
実松くんの紹介に続いて頭を下げると、中村さんはニコリと微笑んだ。
「はじめまして。中村です。お会い出来て光栄です」
手を差し出されたので、それを取ろうとすると、実松くんに止められた。
「触るな。俺のだから」
「へぇ。独占欲丸出しだな。それだけ彼女は特別ってことか。まぁ、初めてだもんな」
「初めてって?」
中村さんの言葉の意味を教えて欲しいと伝わるように実松くんの方を見ると、中村さんが答えてくれた。
「今までもフェアに何度か誘っていたんです。でも、彼女に期待させたくないからって断られていたんですよ。あなたには期待させたいのでしょうね」
「今日は違うんだよ。こっちにも色々事情があるんだ」
含みのある言い方に中村さんの眉が少しだけ上がった。
でも、それもつかの間。