ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「中、そろそろ始まるみたいだ。入ろうか」
言われて、ふたりより前にいた私と実松くんが先にチャペルに足を踏み入れる。
「シンプルだね」
床と祭壇は白。
壁はブラウンの木目調と、ステンドグラスが等間隔に並んでおり、列席者の席は壁と同じブラウン色。
「恭子は神殿の方がいいんじゃないのか?」
実松くんはそう言うけど、派手さのない落ち着いた雰囲気は品があって素敵だ。
「迷っちゃうね」
「なら、神殿とホテルと両方挙げれば?俺、恭子のドレスも白無垢もどっちも捨てがたい」
夢見がちな実松くんに現実を突きつける。
「お金、掛かるよ」
「そんなの気にすんな。恭子のやりたいことは全部叶えてやる。うちの親もそう言うと思うよ」
資産家だという実松くんのご両親。
「もう話したの?」
「当たり前だろ。俺は恭子以外考えられないんだから」
こうしてはっきりと口に出してくれると安心する。
それに嬉しい。
思わず口元を緩めると、実松くんも同じように微笑んだ。