ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「千葉さんの彼。すごくカッコいいわね。どこで知り合ったの?」
「仕事の関係者だよ」
簡単に答えるも、及川さんはさらに情報を求めてきた。
「どこの会社?歳はいくつ?どっちが告白したの?」
「うーん。それ、答えないとダメ?」
そう聞くと、及川さんの手は止まり、極上の笑顔でこちらを見た。
「別に答えなくてもいいわ」
笑顔なのに、なぜだか怖い。
背中に悪寒を感じた時、矢野さんがタイミングよく戻ってきてくれた。
「お待たせしました」
心なしか矢野さんの頬が赤い。
急いでくれたのだろう。
と思ったら違った。
「彼、すごく、すごーくカッコいいですよ。白のタキシードがまるで王子様。モデル顔負けです!」
実松くんを見て、興奮しているようだ。
そのまま及川さんの方を見て言った。
「及川さまの彼は黒のタキシードです。シックでお姫様を守るナイトのようで、それはそれは素敵です」
志摩くんの姿もツボだったようだ。
鼻を膨らませて目を輝かせている矢野さんの姿が可愛らしくて、つい笑ってしまう。
「これは失礼しました」
私に笑われたことを反省したのか、背筋を伸ばし、口元を結んだ矢野さん。
でもふと気を抜くと口元が緩む。
その姿に私は好感が持てた。
でも、及川さんは違うようで、矢野さんに厳しく当たった。