ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
返事を無視してカーテンを開けた実松くんは、全身白のタキシードを身につけていた。
「わぁ!矢野さんの言う通り、本当にカッコいい。モデルみたい」
思わず見惚れてしまうほどタキシードが似合う実松くん。
それに対して、私は……。
「ごめん。見ないで」
余計、場違いな気がして背を向ける。
すると、シャッとカーテンが閉じる音がした。
鏡越しにちらりと見れば、実松くんがカーテンを閉めてからこちらに近付いて来た。
「及川さんくらい可愛ければ実松くんの隣に並んでも違和感なくいられたんだけど」
実松くんがあまりに素敵過ぎて、人前に出る勇気はない。
「ごめん。このまま出ないで脱ぐね」
暗に、試着室から出て欲しいと言うも、実松くんは背後からギュッと抱き締めてきた。
「ちょっと、離して」
「無理。こんなに綺麗な姿見せられて何もしないでなんていられない。今すぐ俺のものにしたいくらい、綺麗だ」
耳元で囁かれて、胸がキュウっと締め付けられた。
体が離れ、正面を向かされ、向き合う形で見つめ合えば、息が止まりそうなほどドキドキする。
「そんなに見ないで」
耐えられず、視線を逸らした。
その直後、実松くんは私のベールを上げ、キスをした。