ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「ちょっと!ここ、試着室だよ?」
外にはスタッフや他のカップルが何組かいる。
矢野さんがいつ戻ってくるかも分からない。
小声で抗議する。
でも実松くんには届かない。
もう一度キスをしてきた。
「こんな綺麗な恭子。他の男になんて見せたくない。早く俺だけのものにしたい」
「ちょっ…!話しながらキスしないで」
くすぐったさに体を捩ると、実松くんはやっとキスを止めてくれた。
そしてベールを被せ、手を繋いだ。
「やっぱり外に出るぞ」
「なんで?!」
他の男になんて見せたくないって言ってたばかりなのに。
訳がわからず、繋がれた手を解こうと、反対の手を伸ばす。
でも簡単には離してくれない。
「俺の花嫁はこんなに綺麗なんだって、自慢したいんだ。写真も撮ってもらおう。志摩にも中村にも、本当は見せたくないけど、恭子は俺のものだって見せつけないと」
強引に手を引かれ、カーテンの外へ出た。
瞬間、その場にいた全員の視線が集中する。
その中には王子様とお姫様のような出で立ちの志摩くんと及川さんもいて。
恥ずかしくて俯く。
でも、実松くんの人差し指が私の顎を上げたので、それに合わせて顔を上げると、ベールを避け、頬にキスされた。
「愛情表現」
耳元で囁かれて、顔が赤くなる。
「なにしてんの!」
恥ずかしさを隠す私の怒声。
「わぁ!」
感嘆の声が同時にその場に響いた。
「素敵!」
「お似合いですー!」
目を輝かせている矢野さん。
他、スタッフや、カップルさんたち。
「良ければこのまま当社のモデルになってもらえませんか?」
カメラマンにまでそんなこと言われて。