恋を忘れた君に
若しかすると、最初からそう言う流れだったのかも知れない。
まあ私達もここで直ぐに解散すれば良い話だ。
「ん、分かりました、気をつけて帰ってくださいね。」
「ありがとー夢ちゃん!蓮、ちゃんと夢ちゃんの事送ってってやれよー、じゃあまたね!」
「夢も気をつけてね、また後で連絡する。ばいばい!」
ちょっと困る一言が聞こえた様な気がするが、気にしない。
私と沢渡さんは離れて行く二人の背中に向かって手を振った。
少し離れた所で、二人は立ち止まり、手を繋ぐとまた歩き出した。
良いなあ、と頬を緩ませる。
「若しかして羨ましい?僕達も手繋いで帰る?」
「・・・結構です。送って頂かなくても自分で帰れますので、ここで解散しましょう。それでは。」
思いっきり不愛想な態度をとってしまった。
申し訳程度にぺこり、と小さく頭を下げ、彼に背を向け歩き出そうとした。
「待って。」
不意に腕を捕まれ、前に進む事を阻止された。
「な、なんですか。」
振り返ることなく、つっけんどんに聞き返した。
「流石に遅いから、一人で帰すのは危ないよ。送って行く。」
「・・・大丈夫です。」
「送って行く。」
「大丈夫ですってば。」
「送って行く。」
「一人で帰れるって言ってるじゃないですか。」
しつこい、と睨み付けてやろうと振り返った。
然しその思いはいとも簡単にへし折られていまった。
何時もの癒しさえ感じる笑顔の中に、如何してか切羽詰まっている様な、切ない様な。
まただ、これ以上見てはいけない、と視線を逸らした。
きっと見ていた時間は数秒だった。
でもその数秒が永遠にさえ感じる程、長かった。
「な、なんでそんなに必死、なんですか・・・しょうがないから、送らせて、あげます。」
動揺は嫌でもばれているだろう。
そして何時にも増して可愛くない返事。
そんな私の反応にでも、安心してくれたのだろう。
握られていた腕の力がゆっくりと緩まっていった。