恋を忘れた君に



「ん~、元気そうで良かった、とか、お大事にとか、ななせが心配し散らかして僕にまで連絡来たよ、とか。」

最後の一言に改めて笑いが出た。

『だって腹痛って言ってたし、急に途絶えるし、まさか、死んだ・・・?と思ったら、取り合えず上の方にいる人たちに連絡したよね。
「薬が効いて寝てただけだから、もう、本当に心配しすぎ。有難いけどさ。」
『で、他には何かあった?』

何となく、土曜日のことは黙っておこうと思った。
後ろめたい気持ちとかそういうものがあるわけではなく、本当に、なんとなく。
今思うと、私はななせに話して居ない事、結構あるんだな、と胸がチクりと痛くなった。

「んーん、何もないよ。」
『そっか!また何かあれば教えてね。じゃあそろそろ切るね。』
「うん、ありがとう。またね。」

スマホを枕元に投げ、仰向けに寝転がった。
今度こそ部屋の中に静寂が広がる。
静かすぎて耳鳴りが酷くなるほど。
どうして沢渡さんと出かける事をななせに話さなかったのか、話せなかったのか。
彼女は恋愛の話とかが大好きだから、きっとこの話もきゃーきゃー言うだろう。
それが目に見えたから、話さなかったのだ。
騒がれるが嫌いとかではなく、喜んでくれるのは嬉しいけれど、その影響で自分までもが期待してしまうかもしれない。
もしかしたらこの人は自分の事が、等と考えてしまうかもしれない。
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