恋を忘れた君に


その背中を追いかける。
“デート”と言う言葉にむず痒くなる。
と、共に、胸の中に何かが掛かる様な、そんな気がした。

「ぅわ、」

俯きながら歩いていた所為で、前を歩いていた沢渡さんが止まった事に気が付かず、思い切りぶつかってしまった。
すると沢渡さんが此方を向き、べ、と舌を出し、仕返し、と言う様に悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
その表情に思わず笑みが零れてしまう。
彼のちょっとだけ子供っぽい一面も知る事が出来た。
人に関わってみないと分からない事って沢山あるものだなあ、と改めて思った。

そこからは、彼の背中にぶつからない様に、隣を歩いた。
自然と歩幅を合わせてくれる事にも、擽ったく感じる。

暫く歩いていると、小さなカフェに着いた。
お店の前には花が沢山飾られていて、うさぎの置物がお店の看板を持っていた。
お店の名前は《 champ de fleurs  》
どう言う意味なんだろう?

「ここ、よく来るんだよね~、可愛いお店でしょ?」

沢渡さんがお店の扉を開けてくれる。
カランカランと心地よい鈴の音が響いた。

「いまっしゃいませ~、って、あ、蓮ちゃん。こんにちは~。」

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