恋を忘れた君に
人の好さそうなおじさんがカウンターに1人。
後は、ホールに女の子が1人。
沢渡さんはそのおじさんに手を振っていた。
「もしかして彼女ちゃん?ふふ、いつもの席空いてるわよ、どうぞ。」
「いつもありがと、じゃあ夢ちゃん、こっち。」
“彼女ちゃん”という言葉に否定しなかった。
その人に小さくお辞儀をして、沢渡さんの後ろを着いて行った。
案内された先は窓際の二人掛けの席。
此処で沢渡さんはいつも一人で食事してるのだろうかと考えると、悔しいけれど、絵になる。
手慣れた様子で私の座る側の椅子を引き、どうぞ、とジェスチャー。
女の子に慣れているんだろうか・・・。
ぺこり、と頭を下げて、腰を下ろす。
私が完全に座り切るのを見ると、彼も席に着いた。
メニューを開き、どれにしようか選ぶ。
選んでいる最中にホールに居た女の子が水を運んできてくれた。
女の子に向かって頭を下げると、それを見る沢渡さんが笑っていた。
「な、なんですか?」
「んーん、なんでもないよ~。」
未だにこにこしたまんまだったけれど、気にしないことにした。
お昼のランチコースと言うものがあり、二人ともそれを注文した。
「あの、ここのお店の名前ってどう言う意味なんですか?」
「シャン・ド・フルール、フランス語て花畑って言う意味だよ。」
「へえ・・・だからお店の前にも綺麗な花がいっぱいあったんですね。」
「そうそ、カウンターの中に居るちょっとおかまチックな人が店長なんだけどね、外装も内装も食器とかまで店長の拘りが詰まってて、見てて楽しいよ。」