恋を忘れた君に
「夢ってさ、こう言うの全然興味ないよね?」
「いや、格好良いとは思うけど、んん・・・。」
そんな事を話ていると、黄色い声援が私たちの教室の前迄やってきた。
教室の中に居た人達もざわつき始め、廊下を見ている。
するとそんな人ゴミの中から成瀬先輩がひょっこりと顔を出して、私を見ると、
「あー!!!居た!!」
と叫んだ。
その言葉に吊られて一緒にこのフロアに来ていた先輩達や、周りの女性陣が一斉に此方を見てきた。
「ちょっとごめんねー。」
と人の間を縫って私の方へ来る。
混乱してしまい、何故か、取り敢えず逃げよう!と言う結論に至ってしまった。
教室にはベランダがついており、そのベランダは他のクラスと繋がっていた。
なのでベランダに飛び出し、走り出した。
「?!?!ちょ、ちょっと待って?!」
まあ然し、運動部と帰宅部、男子と女子なんてその差は直ぐに埋まってしまう。
「つーかーまーえーた!」
と余裕そうに呟き、私の腕を引いた。
「何で逃げたの?!びっくりしたー。」
「や、何となく・・・こっち来てる感じ、したので。」
ふーん、と言うと其の儘腕を引かれ、ベランダの端迄連れて行かれた。
私を壁際に追いやると、
「これで逃げられないな?」
と得意気に笑い、私の前で仁王立ちした。
そして思い出したかの様にポケットに手を突っ込み、一枚のメモを渡して来た。
「はい、それ俺のメールアドレスと電話番号。帰ったら連絡して。」
メモを開くと、
【成瀬 絢人
090-xxxx-xxxx
bsk_sk.K@xxxxx.xx】
と書かれている。
「なるせ・・・あ、あや・・・?
「けんと。けんとって呼んで。じゃあ、行くね。」
それだけ言うと一番近くの教室に入り、廊下で待つ人だかりの中に消えて行った。
頭が追い付かない儘に、連れられた道を戻り、教室に入ると、グループの女の子から、話した事もない女の子に迄囲まれ、質問攻めにされた。
それが、彼と私の正式な初めての会話だった、と思う。