恋を忘れた君に
それから帰宅して、言われるがまま、連絡をした。
>>小鳥遊 夢です。よろしくお願いします。
直ぐに返事が来た。
>連絡来ないかと思った!ありがとう、よろしく!
その日のやり取りはそれだけだった。
それから毎日、連絡を取ったり、学校で見かけたら手を振る様になっていった。
その辺りからだった。
女子達の様子が変わって来たのは。
休憩時間にトイレに向かうと、ひそひそ話が毎度の事聞こえる様になった。
「ねえ・・・あいつでしょ?」
「そうそ、先輩と面識あるからって調子乗ってるよね。」
気にする事無く生活していたが、私と同じグループの子達が心配してくれた。
「・・・大丈夫?」
「あんまり気にしないでね。」
「うん、全然平気だよ。ありがとう。」
そんな毎日を過ごしていたある日。
いつも通り学校が終わり、自宅に帰った後、先輩から連絡が来た。
>夢って好きな人居る?
いつの間にやら、下の名前で呼ばれる様になっていた。
私は変わらず成瀬先輩だったけれど。
>いえ、居ません。成瀬先輩は?
嘘。
この時にはもう、先輩の事が好きだった。
>俺も居ないよ。じゃあ、俺達付き合ってみる?
うとうとしかけていた眠気が一気にぶっ飛んだ。
直ぐに返事をしたくなるのを必死に堪え、返事を考える。
数分後、
>良いですよ。
とだけ返事をした。
>撤回とか無しだから。これから俺の事は下の名前で呼ぶ事。後タメで。
その返事が来た時にはもう、私は眠ってしまっていた。
凄く、良い夢を見ていた気がする。
翌日、いつも通り登校した。
付き合ったからと言って生活ががらりと変わる訳でもなく、授業中も休憩時間も、いつも通りだった。
そんな代り映えのない毎日を今まで通り過ごしていた。
偶に見かけると手を振ったり、すれ違うと言葉を交わしたり、彼方の部活が休みの時は一緒に帰ったり、お家に遊びに行ったり。
まあ中学生のお付き合いなんてこんなもんだろう。
私たちは今まで通り、何も変わらなかった。