恋を忘れた君に

お会計が終わりお店を出ると、店長さんが出口迄見送ってくれた。

「蓮ちゃんも、彼女ちゃんも、また来てね。」
「うん、また来るよ~。あ、あやちゃんにもまたねって言っておいて。」

沢渡さんは店長さんに手を振り、私もお辞儀をし、お店を後にした。

二人きりになり、隣に並んで歩いた。

「ごちそうさまでした。本当に素敵なお店でした。」
「でしょ~、気に言ってもらえたなら良かった。」

得意気にふふん、と笑ってくれた。

「ちょっと寄って行かない?」

と、直ぐ其処にあった小さな公園を指さした。
こくん、と頷く。
ちょっとした屋根の下に、ベンチが一つ。
其処に隣同士に腰かけた。
時刻は未だ4時。
とは言え日が陰り始めていた。
未だ子供達は遊んでいる時間で、私たちの目の前で鬼ごっこをしたり、砂場で遊んだり。
各々に楽しんでいた。
私は其れを無心で眺めていた。

「夢ちゃん。」

声を掛けられ、視線を沢渡さんに向ける。
返事をする事なく、彼の横顔を見つめた。

「今、好きな人は居る?」

沢渡さんは此方を向くことはなく、前を見つめたまま問い掛けてくる。
そんな質問をされるとは思っておらず、驚いてしまった。
暫く固まった後、

「居ません。」

と答え、首を横に振った。

「そっか。」



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