恋を忘れた君に


本人たちは気づいているのかどうかわからないけれど、先ほどから横を通る女性たちがチラチラ見ていた。


今ので少し分かったかもしれないけれど、私は人間観察が好き。
勝手に、こんな感じの人なのだろう、と想像するのが好き。

「俺たちも今日休みで、二人で出かけてたんだよな。で、ななせが近くに居るっていうから合流しようかなあって。」
「夢にも、蒼佑くんとも、蓮くんとも、仲良くなってほしくって。私は自分の好きな人たち同士、仲良くなってほしいって思っちゃうんだよね。あ、でも夢にだけだからね、こんな風に思えるの。」

彼女のこう言う所、凄いと思う。
自分の彼氏と他の女の子が仲良くなって欲しい、だなんて。
私だからと言ってくれるのは、よっぽど私の事を信用してくれているのか、私に取られる心配なんて露ほどもしないないのか・・・
前者であると、私は信じてるよ。

「私もななせが大切に思っている人達とは仲良くなりたいなって思ってるから。ありがとう。」

私たちはお互いに肩を竦めて照れ笑いを浮かべた。

「おーい。俺の彼女と二人の世界に入るのやめてもらえますかー?」

相田さんがななせの手を握り、邪魔に入る。
ななせは一気に顔が赤くなり、
「ちょっと、蒼佑くん、恥ずかしい、から。」

と、そっぽ向きながら呟く。

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