私はあなたのストーカーです
「保健室の、先生は」
「なっちゃんなら職員室じゃないかな」
「なっちゃん……」
「養護教諭の中津夏(なかつ なつ)。だから、なっちゃん」
会ったことがない。入学式とか全校集会で挨拶があったりしたかもしれないけれど、覚えていない。
なんとなく、なっちゃんという響きから、若い女性をイメージした。
あとジュースのパッケージも。
「すぐに戻ってくると思うよ」
なら、ここで待たせてもらおうかな。
できれば時間稼ぎできると助かる。
体育館に戻りたくないから。
藤ヶ谷くん以外に誰もいない保健室にいるのも気まずいけれど、危ないオーラを放つものの直接危害を与えられたわけではないので、ここにいる方が安全だと思う。
あまりにも重い空気に戸惑い、
「藤ヶ谷くん、は。……どこかケガしたの?」
質問をしてしまった。
それは、単純に、疑問でもあった。
なんでここにいるのかな。
「んーん。サボり」
こんなに堂々とサボってる人、初めて見た。
「座ればー?」
藤ヶ谷くんは、先生のデスクにかけている。
サボるなら普通ベッドで横になるんじゃないのかなと思いつつ、サボりに普通もなにもないか。
藤ヶ谷くんの近くにある丸椅子にかけた。