私はあなたのストーカーです
「テーピングくらいなら。僕してあげられるけど」
「え?」
「こう見えて、医者の息子」
「……!」
本当かな、と思っているうちに戸棚から慣れた様子で用具を取り出していく。
「勝手に使って怒られない?」
そのあたりって、先生しか触れないところなんじゃないのかな。
「友達想いな僕が。いちはやく君を治療してあげたかった。ということにしておこう」
この人に任せて本当に大丈夫なのだろうか。
先生の椅子を私のすぐ傍に運ぶと、そこにかけ、私の左手首を掴んでくる。
その瞬間、身体がビクッと身震いしてしまったのは
藤ヶ谷くんが怖いというよりは――今の私が他人に触れられるということそのものを恐れているからなのだと思う。
(ごめん、なさい)
親切にしようとしてくれている、あなたを怖がったわけじゃないの。
【てっきり折られたり、切られたりしたのかと】
とんでもないことを笑顔で言っていた藤ヶ谷くんが、今は、懐っこい笑顔を向けていて。
(このひとは、どれが、ホンモノなんだろう)
ひょっとしたら真面目に巻いてくれないかもしれない、なんて不安になったのも束の間。
あっという間に痛い指をテープで固定してくれた。
(器用だなあ)
悠も、昔こういうのやってたな、と思い出す。