私はあなたのストーカーです
だとしたら、叫んでも無駄だ。
事態は悪化するだけで、助かったりなんてしない。
目をぎゅっとつむる。
もう、なにも見たくない。
全部、悪い夢だったらいいのに。
目が覚めたときには、仁依菜ちゃんがまた笑って私の隣を歩いてくれて。
一緒にアルバイトしたり。
もしかしたらお互いの恋の話をしたりなんかして。
(そんな、普通の高校生活は、もう私にはおとずれない)
「あー。これはカワイソウ」
(……カワイソウ……?)
恐る恐るまぶたを開くと
藤ヶ谷くんが見下ろしていたのは、私の腹部だった。
「あっ……」細く長い指でお腹あたりをスッと撫でられ、びっくりして声が出た。
「油性だね?」
「…………」
「そっか。見えないところに書かれてるわけだ」
藤ヶ谷くんが言っているのは、麻美たちからマジックで身体の至るところに書かれたラクガキのことだ。
誰にも見せられないような、恥ずかしいスラングの数々。私も意味は知らなくて調べて初めて知ったものもある。
「見ちゃ、いやだ」
「悔しいね」
「え……?」
「苦しかったね。よく我慢したね」