私はあなたのストーカーです


(あ)


「……私の宝物。持ってくるの、忘れた」


先生からもらった消しゴム。


持ってくるの、忘れた。


なんて。

こんなときも、先生のこと考えてるの、おかしいよね。


雨がポツポツ降ってくる。


行く宛なんてないし。


携帯電話も、お金も、持っていない。


このまま途方もなく歩いていたらどこにたどり着くかな。


知らない街に行けるかな。


悠なら、何キロも走って行けちゃうんだろうな。


そういえば、この通りだっけ。


――失踪した少女が、最後に目撃されたのは。


そう考えるとゾッとしそうなものなに、それ以上に心が空っぽで、なにも感じないよ。


もう痛いのも苦しいのも辛いのも惨めなのも嫌だ。

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