私はあなたのストーカーです
それがレディースだというのは一目瞭然だった。
麻美と過ごした期間に買った雑誌でも大きく取り上げられていた、有名ブランドばかりだったから。
「多目的トイレってさ。エロいよね」
意味がわからないよ藤ヶ谷くん。
「脱いで」
「え?」
「濡れた髪は、乾くのを待とう。でも、制服は、なんとかしないとね」
びっ……くりした。
着替えてって意味だよね。うん、わかってるけど。変なこと言ったあとにそんな言い方しないでよ。
それに。
「着替えるっていっても……」
「あー、僕のことは気にしなくていいよ」
気にしないという選択肢はありませんが。
「ここ、そんな人来ないけどさ。何度も出入りしたら怪しいだろうから」
「あ……」
「それとも。どっか別のとこで待ってるから来る? それでもいいけど――」
「行かないで」
なぜか、咄嗟に、藤ヶ谷くんの服を掴んで引きとめてしまった。
(ひとりにしないで)
「オッケー。後ろ向いてるね。ワンピースのファスナーがさ、たぶん止めにくいかなって。無理そうなら手伝うね」
「ありがとう」
なんで私、藤ヶ谷くんと多目的トイレにいるんだろう。
どうして洋服なんて買ってもらってるんだろう。
これ全部選んでくるの大変だったろうな。