私はあなたのストーカーです
「……っ」
鏡に映る自分は、自分じゃないようで。
「本当に……シンデレラだ」
「なかなかの自己評価だね。プリンセス」
「いやっ……そういう意味じゃなくて。灰かぶり姫が、魔女に綺麗なドレス着せてもらうシーン、あるでしょ?」
お母さんのドレスを継母に引き裂かれ、着れなくなって、舞踏会に行けなくなるシーン。
魔女が魔法で手直しして色まで変えちゃうんだ。
今の私は、さっきまでずぶ濡れの制服を着ていたようには見えない。
「童話は、あんまり細かいとこまで知らないなー。裏話くらいしか」
「裏話?」
「グリム童話とかってさ。実はすごく怖いんだよー。白雪姫とか本当にエグい。子供が、聞いちゃいけないくらいにね。それを子供に読み聞かせられるまで綺麗に脚色しちゃったベツモノが、ヒナコちゃんが読んできた絵本ってこと」
「……ほんとに?」
「うん。聞きたいなら話してあげるよ? 大人向け、童話」
「遠慮、します」
怖い話を聞きたい気分でもないし、藤ヶ谷くんの口から話されたら三倍は怖そうだ。
「あは。それで。そのシーンがどうしたって?」
話を戻してくれた。
なんだかんだ、話すの上手だよね。
さっきから全然話が途切れない。
ペースは持っていかれっぱなしだし、理解できない部分もあるけれど、余計なことを考えて悩んだり落ち込まずに済んでいるというか。
「まさにそんな気分だなって思ったの。さっきまでの私は、こんな素敵な服、着るとも思ってなかったから」