私はあなたのストーカーです
藤ヶ谷くんの言うとおりだ。
なんとなく、建物のそばを横切ったりしたとき、そこが恋人のために用意された場所だということはわかっても。
それ以上のことは、わからなかったりする。
「どんなこと、するの?」
「教えて欲しい?」
「…………」
「仕方ないなあ。僕と、これから行って。身を持って知る?」
「え、遠慮しておきます!」
「あはは」
藤ヶ谷くんは、完全に私の反応を見て楽しんでいる。
からかわれている気がしなくもない。
それでも、なんだか、あたたかい。
「やっぱりうぶだね。想像通り。天然記念物だ」
もうなんとでも言ってくれ。
「でもさー、ヒナコちゃん。くりりんとの、そういうこと想像したりしないの?」
「……っ、ええ!?」
「してるでしょ。ラブ的な妄想」
顔を覗き込んで、問いただされる。
「す……こし、くらいなら」
「やっぱり」
先生と、手を繋いでみたいとか。
あるわけないのに、夏祭りに行ったら、こんな感じかなとか。
辛いときにそんな楽しい妄想をしていると幸せで。
もう何回先生とデートしたかわからない。
もちろん想像上でね。
さっき鏡に映る自分がいつもと違うと感じた瞬間、やっぱり思い出したのは先生のことだった。
先生にこの姿で会いたいと思った。
死ぬなら。
最後に、先生に会ってから、死にたい。
いっそ、先生の手で殺されたい。
そうすれば私は死ぬ瞬間まで幸せだったと感じられそう。