私はあなたのストーカーです


(……なんて。どうかしてる)


「先生との妄想。しちゃダメかな」
「まさか。全然オッケーでしょ」
「ほんとに?」
「僕なんて、よく考えてるよ」
「藤ヶ谷くんも恋してるの?」
「恋じゃなくても。あの子とキスしたいなー、とか。ヒナコちゃんに、えっちなイタズラしたいとか」
「な、なに、言ってるの」


思わず半歩、藤ヶ谷くんから離れる。


「考えるだけなら自由でしょ」
「口に出してるじゃん」
「あー、まあね。今のは願望が言葉に出たね」
「え!?」
「考えてみてよ、ヒナコちゃん。たとえ、どんなに卑劣なことでもさ。頭に描くだけじゃ誰にも知られないわけで。それを実行するから、犯罪になるわけで」


(……?)


「そうだなあ。たとえば君が『栗原』って姓になって。くりりんの赤ちゃんを授かる未来を描いたとしても。誰の迷惑にもならないよ」
「そうだね」
「でしょ?」


思い描くだけなら、自由だ。


だから私は、さんざん、先生との楽しいことを考えてきたわけで。


それが生き甲斐とさえ感じていたわけで。


それは、先生に知られないうちは、迷惑じゃないだろう。


そうだよ。その通りだと、思うけど。


「やっぱり虚しいよ」
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