私はあなたのストーカーです


「……知ってるよ」


お母さんから、もう何年も、お父さんの悪口を聞かされてきたし。


「同級生の女の子より冷めてる自覚、あるよ」
「へえ」


立ち止まり、視線を向けるのは、先生のマンション。

駅からそう遠くない割にひとけが少なく、騒がしくもなく、閑静な住宅街という感じで住みやすい場所だと感じた。


(この道を、先生は歩いたことがあるんだ)


「右見ても左見ても。恋、恋、恋。憧れるような。バカバカしいような。もっと他にあって、いいじゃんって。どこかで感じてた」
「なるほどね」
「それでも。先生だけは、違ったの」
「どう違ったの?」
「先生となら。恋したいし。恋だけじゃない」


――気づいたらすべてが先生中心になってたの。


「私ね、藤ヶ谷くん。麻美に携帯奪われて、トイレに投げ捨てられたの」
「それでフレンド登録してくれなかったのか」
「悠とのメッセージ読んで頭に血がのぼったみたい」
「困ったね」
「違うの」
「……なにが?」
「ほんというとね。少し、ホッとしたの」

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