私はあなたのストーカーです


藤ヶ谷くんの言葉の意味が理解できない。


「じゃーね」


駅がすぐそこの、改札からは少し離れている裏手にあたる場所で、手を振って背を向けた藤ヶ谷くんが


なんだか、寂しげに見えて――。


「藤……」思わず、呼び止めようとした、そのとき。


「宇崎?」


――!


「あー、やっぱり。雰囲気違いすぎて驚いた。私服そんな感じなんだな」
「栗原、先生」


なんで。


なんで。


「今、誰かといたみたいだけど。一人か」


どうして。


「病院いったか?」
「なんで、ここに」


これは、偶然か。それとも。


(運命?)


「栗原は知らないか。この街に住んでるんだ、俺」
「……嘘つき」
「え?」
「忍者屋敷って言ったじゃないですか」


そんなこと、本当は、どうでもよかった。


私は、あなたが、目の前にいるだけで。


それだけでこんなに幸せになれるんだと、再確認させられた――。


「先生」
「……宇崎?」


涙をこらえ、先生に、伝えた。


「このまま、私のことさらってくれませんか」


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