私はあなたのストーカーです
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我ながら、なんてことを言ってしまったんだと思った。
「とりあえず。あったかいもんでも飲んで」
先生の車の助手席に乗り込み、待機していると、自動販売機で先生がジュースを二本買ってきた。
「ココアとミルクティー。どっちがいい?」
「……先生は?」
「どっちも好きかな」
「じゃあ。ココア」
「オッケー」
蓋をあける音が、薄暗い車内に響く。
「どーぞ」
あけて、くれたんだ。ケガしてるから?
それくらい自分でできるのに。でも嬉しい。
「いただき、ます」
「それ飲んで。落ち着いたら、帰ろうな」
帰りたくない。
あんなうちに、本当は、帰りたくない。
「はい」
それでもやっぱり、こう言うしかなくって。
(伝えたいのに伝えられない)
藤ヶ谷くんは、きっと、私の背後に先生を見つけたんだ。
先生を視界に捉えたからこそ
『幸せになるんだよ、ヒナコちゃん』
あんなことを言って足早に姿を消したんだ。
面倒見のいい先生は、こんな時間に出歩く私を放ってはおかない。
きっと家に、送り届けてくれる。
そう考えて二人になるチャンスをくれたんだ。
――背中、押してくれたんだ。
ここはもう学校じゃないし、今は先生は仕事中じゃない。
今ならどんな話もできる。
私が。私から、踏み込みさえしたら。