私はあなたのストーカーです


「悠くーん」


声は扉の前に立つ男から放たれる。


――俺の“悪友”


表向きは知り合いじゃないが。


俺が中学時代、むしゃくしゃして公園で野鳥を刺し殺そうとしていたときに出逢った男。


『逃してあげて。ね?』


あのときから、互いに

なにか似たものを持っていると認識している。


「なんだ、藤ヶ谷」


あのときこいつは俺に、こう言った。


むやみに動物の命は奪うな。

むしゃくしゃしてる“原因”を消せ、と。


『ママがムカつくなら。ママの息の根止めなきゃ。八つ当たりは、よくないよ』


ヤバイやつだと思った。

だけどその考え方は嫌いじゃなかったし。


周りにいないタイプで面白いと感じた。


父親は警察で母親は医者。

そんな家庭に生まれ、なにが藤ヶ谷を狂わせたかは、わからない。


藤ヶ谷の助言を取り入れた俺は、うまく自分の母親を弱らせることができている。


まさか高校で再会するとは思わなかった。

ひなと同じクラスで隣の席らしい。


それ以外にひなと藤ヶ谷の接点は、なさそうだ。


そう思っていたが。


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