私はあなたのストーカーです


片親だから苦労してるとか、両親揃ってるから苦労しないなんてことは一概に言えないし。

言い切るつもりもないけれど。

それでも仁依菜ちゃんが優しくなれるのは、これまで生きてきた中で苦労したり、傷ついたり、我慢したり。

自分のことだけ考えずに相手のことを労った経験があるからなんじゃないかと、そんな風に思えてならなかった。


「あー、あのときは。ヒナコが迷子の子猫みたいで、声かけずにはいられなかったんだよ」
「え……!? 子猫?」
「ふふ」


ときどき、こんな不思議なことを言うのも。

そのあと柔らかい笑顔を見せてくれるのも、かわいい。


「あれから一ヶ月か。あっという間だね」


光陰矢の如しとはいったものだが。本当に時間がたつの、はやい。


「そろそろ中間テストかー」
「ウッ……」
「女子高生ってもっと華やかで毎日ハッピーの連続ってイメージあったのに。なかなかハードだよね」


本当にそのとおりだ。


「バイトとかしてみたいけど、そしたら勉強ついていけなさそうだなー」
「私たち、部活してないから時間あるもんね」
「家のことしなきゃだし、お金かかりそうだし、部活できなかった分バイトしたいな」
< 26 / 353 >

この作品をシェア

pagetop