私はあなたのストーカーです
返事を渋る悠を見て、聞いてはいけないことを聞いてしまった気持ちになってくる。
話題、変えたほうがいいかな。
「あのさ、悠。冷蔵庫のプリン」
食べていいよって。言おうとしたそのとき。
「母さん、料理しなくなって」
「え……?」
予想だにしない悠の発言に、胸がギュッと締めつけられる。
「ちょっと鬱っぽいというか。金はもらってるんだ。それで買って食えって、ちゃんと足りるだけ受け取ってるんだけど外食とかばかりになるのもなって。それで始めてみた」
知らなかった。
悠のお母さん、明るくて優しそうで。
そんなことになってるの、知らなかった。
「あー、そんな顔すんな」
そう言われて心配する気持ちが顔に出てしまっていることに気づく。
「余計な心配かけたくなくて黙ってた」
「いつ、から」
「兆候があったのは、中二の冬で。俺が部活引退した頃から悪化した」
「そう、なんだ」
「表面的にはわかんねーもんだろ」
「……うん」
「突然ふさぎ込んだり、暴れたり、大きな声出したり。家ん中では、結構すごい。ほら、うち、父さん海外出張中だろ。多分、寂しいのもあると思う」
こんなとき。なんて声をかければいいんだろう。
「母さんがそんな状態なのに俺、高校でもまた部活させてもらってて。こんなに、やりたいことばっかやっていいのかなって、ちょっと後ろめたい」