私はあなたのストーカーです
私の知らないところで、色んな人の、色んな生活があるとは思っていたけど。
身近な悠にも、抱えていることがあった。
「大丈夫だよ、悠」
私の声に、悠の瞳が揺れる。
「悠のお母さんは、悠のこと応援してる」
試合の、観客席で。
声出してエール送ったり、優勝したらすっごく喜んでたりしてる悠のお母さんの姿、幾度となく見てきた。
「悠が好きなこと続けてるの、悠のお母さんも、嬉しいはずだよ」
無責任かもしれないけど心からそう思った。
「ありがと。そうだよな。俺もそう信じてる。けど、情緒不安定な母さん見てると、俺がやりたいことって間違ってるのか不安になったりしてさ。だから、ひながそう言ってくれると、すげえ救われる」
「そういうことなら。まあ、私が料理教えてあげてもいいけどね」
「え?」
「悠の料理スキルは破滅的だからね」
「はは。そりゃ助かる」
「部活はやく終わる日とか一緒に作って食べよう」
「ああ、それならテスト期間中ずっと部活休みになる」
「じゃあそのときにでも」
「よっしゃ」
ガッツポーズする悠を見て、頬が緩む。
悠ともう少し距離を置くつもりが、むしろ縮まってしまった。
でも、きっと、これでよかった。
この選択は間違っていない。
周りを気にすることは大事だ。
なるべく迷惑はかけたくない。
それでも、麻美みたいな悠のファンの機嫌を損ねないために、私が悠と仲良くするのを避ける必要なんて本来ないはずで。
……私が、間違ってた。