私はあなたのストーカーです
「ごめんね、悠」
「ん?」
「学校で、よそよそしくして。これからは、いつも通り、名前で呼ぶよ」
「いや。それに関しては――俺も悪かったなと」
「え?」
「俺が声かけたりすることで、なんつーか、誰かに言われたりしたのか?」
珍しく、悠の勘が働いている。
「……別に」
「ほんとか?」
「うん。ちょっと、入学早々騒がれたくなかっただけ」
「あー。俺のこと聞けって言われた?」
「そんな感じ」
「全部断れよ」
「……え?」
「ひなが、負担になることしなくていいから」
それって、つまり、橋渡ししなくていいって言ってる?
「いってもわからないやつには俺からハッキリいうから適当にパスしてくれていい。巻き添え食わせたくない」
なんだか、いつも、ゆるーい感じの悠が男らしく見えた瞬間だった。少しだけ。
「……うん。わかった」
やっぱり色んなことが変わってくんだ。
悠も、知らないうちに、どんどん成長しているんだね。
「そういえば。ひなのクラスの担任」
「?」
「結構人気、あるよな」
そう言われて担任の先生を頭に浮かべる。
栗原(くりはら)先生。
正確に聞いたわけじゃないけれど、見た目とか雰囲気からして二十代前半くらいの、他の先生に比べるとずっと若い先生。
フレンドリーな性格をしているから『くりりん』なんて呼ばれている。
それに対し先生は、『俺はハゲてねーよ。スケベなのは否定しないがな』って返している。
「それが?」
「それが……って」
顔をしかめる悠の意図がわからないでいると、「ごちそうさま!」食器を片付け始めてしまった。
なんなの。