私はあなたのストーカーです


このまま一年間、こんなことが続くんだろうか。麻美の気が済むか。飽きるまで。


「いそげよー」


少し離れたところから、声が聞こえてきた。顔を上げると姿は見えず、その声が私にかけられたものではないと気づく。


慌てて立ち上がると、筆箱が欠けてしまっていることに気づいた。それに、消しゴムがない。


あたりを見渡すも、それらしきものは見当たらない。


『ヒナコのステショってダサいよね』


麻美の捨て台詞を思い出し、唇を噛みしめる。


「宇崎(うざき)?」


ハッとして声の主を見ると――。


「どうした。次は、えーと」


栗原先生。


ナチュラルな黒髪で、スラリと背が高くて、スーツが似合ってて、でも社会人っていうより大学生みたいな雰囲気のお兄さん。なんていうと『キョーシだ』ってお得意のツッコミ入れられるかな。


もっとも、私は先生とみんなみたいなコミュニケーション取れる気がしないけれど。

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