私はあなたのストーカーです


なんか、いやだな。
悠とは。もっと違う話がしたい。


これまでみたいな。


「ひなも。いたりする?」
「……?」
「だから。ほら。気になる男」
「なんでそんなこと聞くの」
「否定しないのか」
「え?」
「誰。俺の知ってるやつ?」


そんな人、いないよ。
恋がなにかもわからないのに。


なのに。


「……俺には言いたくない?」


勝手に話を進めないでよ、悠。


「別に、いないよ。気になる人なんて」


悠から目をそらした、そのとき。


【かわいいのにな】


頭に浮かんだ顔が、消えない。ちがう。

あれは筆箱をかわいいって言われただけで。

それだけで。


【よろしくな】


あれだって。担任として、言われただけ。


そんな当たり前のことを改めて考えると、どこか、複雑な気持ちになる。


どうして?


「そっか。いねーか」

「うん」


なんでここで栗原先生のこと、考えちゃうの。

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