私はあなたのストーカーです


「頼られたら応えてくれるんだよねー。授業でわかんないとこ。個人レッスンしてくれる?」
「なんの」
「保健体育♡」
「とりあえずグラウンド二十周しとくかー」
「鬼」


コミュニケーション上手だな、と思う。聞こえてくる話から先生はいい加減なようで着実に生徒と心の距離を縮めていて。


授業もそうだけど、これから進路の相談なんかをするにしても、この人なら安心して話せそうって空気感がある。


【よろしくな】


わかってた。あれが、特別じゃないことくらい。


――栗原先生。


無意識のうちに、ノートに、先生の名前を書いた。


たった二文字。栗と原。

よく見かけるわけじゃないけれど、珍しくもない。


ただの名字であり、ただの漢字。


それがどういうわけか色づいて見えた。


< 66 / 353 >

この作品をシェア

pagetop