伝説に散った龍Ⅱ
ーー近藤との密会の場所に、私は屋上を選んだ。
『患者のみ立ち入り厳禁』とある看板を一瞥し、重たいステンレスの扉を開く。
柔らかな青空が、私たちを出迎えた。
「ごめんね、急に連れ出して」
「謝らないで。俺も話したいと思ってたところ」
「…奇遇ね、私も」
私もちゃんと、一度貴方と話をしなきゃと思ってたの。
フェンスに体重をかけた彼の背中に語り掛ける。
どこか寂しそうなその後背は
それでいて、程よく私を警戒した。
私たちは、お互いに気を遣いあっている。
いつものことだ。
私が歩み寄ろうと思っても、近藤が見事に私をシャットアウトしている。
女嫌いと断言した柚より
近寄り難いオーラを常日頃纏う烈より
ずっと、分厚い壁を感じる人。
近藤にも女は寄りつくが、他ほど激しいスキンシップを取られない理由はそこにあるのでは無いかと思っている。
あくまで、私から見た近藤の話だけど。
ーーしばらく続いた沈黙を
意外にも、破ったのは近藤だった。