伝説に散った龍Ⅱ
「───セリナ…っ!」
全身が大きく跳ねながら地面に叩きつけられ
身体中に鈍い痛みが走る。
しばらくしてトラックのエンジン音が消え、自分が歩道にはじき出されたことを知った。
ひき逃げだ。
「私、」
本当、なにしてんだろ、私。
………死ぬとこだった。
危うく
命を落としてしまうところだったことに気がつく。
そして、同時にもうひとつ。
なぜか私は生きていて。
その理由に、程なくして気がついた。
───誰かに助けられた。
でも
誰に?
慌ててあたりを見回せば、割と距離なくして近くに倒れている人影を見つける。
「───待っ、大丈夫!?」
自分の人生史上最大と言っても過言ではないボリュームで叫び、駆け寄ると
私を助けてくれたらしその人影は
暗闇の中でゆっくりと立ち上がった。
「良かった、生きてた…」
「…」
「あの怪我、してないですか…?」
起き上がったはいい。
…けれど、歩くのも辛そうで。
彼が起き上がりやすいように。
ごく自然に、ごく当たり前に、私は右手を差し出した。
はずなのに。
何故か逆にその手を力強く捕まれ、引き寄せられる。
なんとも自然に
私は彼の胸の中に収まる形になった。
───捕まった。
直感が働いた。
瞬間的にそう感じた。