伝説に散った龍Ⅱ
「…」
「おい」
聞いてんのか。
少しばかり怒っている様子の諒二に
今度は返事を返さなかった。
さっきまでの諒二のイラつきを煽るようなそんな心意気で、
ゼッツーのエンジンを吹かす。
真っ黒なフルフェイスのヘルメットの向こう側
彼の顔は確かに歪んで
その口は、舌を打つよう形どる。
久しぶりに見る彼の悔しそうな顔。
普段飄々とした人間のはずの諒二が
大切なものが関わると余裕を失うことを知っている。
…そうか。
諒二は私を、大事に思っててくれていたのか。
うっすら開いた唇が私に伝える。
───お前は悪くないよ