伝説に散った龍Ⅱ
Ⅵ/Remember me
諒二。
心のなかで、そっと諒二に問いかける。
───いつもありがとう、諒二。
切実に吐いたため息が私では無い何者かに向けたものなのか
それとも私自身に向けたものなのか。
唯一知るはずの私の脳は機能していない。
一つだけ分かる、たしかなことは
今私が狼に戻ったところで、彼らはきっと同じ過ちを繰り返す
ということ。
棗と私の腰と腰とを結ぶ紐は、緩くきつく、曖昧な具合。
棗は、起きない。
「強く殴りすぎたのかな…」
本日二度目の呟きは、前者のそれよりも重く。
私と棗を取り囲むその場の何もかもが、暗く重い雰囲気に呑まれかけていたのは
きっと私が、辛気臭い顔をしていたから。
…ごめん棗、
「もう少しで」
───私を、忘れて。