伝説に散った龍Ⅱ
思わず笑い出しそうになった。
私の期待を決して裏切らない
更に何段階も私を上回っていこうとする、浅野深臣という男に。
やっぱり。
ミオに任せて良かった。
彼なら私を越えていける。
私も最早、屍でもなんでもないけれど。
大きな時を経た今
その思いが当時より一層強まっているのをはっきりと感じる。
「…ぶふっ、」
「おい」
「あははは」
「…分からねえ女」
私の口から飛び出した唾がミオを直撃するのに、そう時間はかからなかった。
そこまで来ていた笑いが
朝日に煌々と照らされて菩薩のごとく穏やかに笑うミオの姿に、とうとう堰を切ってしまった。
「私は出来ればお前に叱って欲しかった」
「そんなことだろうと思った
お前は昔っから他力本願の鑑だからな」
そう言って、ミオは溜めていた息を一気に吐き出す。
いつの間にか、その表情も呆れたようなものに変わっていた。
「…だから俺は言わねえよ」
「…そっか」
「お前に任せる。全部」
くっきりと登りはじめた太陽が
薄紅く私たちを照らし出す。
もう、帰らなくちゃ。