伝説に散った龍Ⅱ
Ⅶ/秘匿
「ーーただいま」
自宅の扉を開け足を踏み入れた瞬間
胃袋がはしたなく鳴った。
「おかえり〜」
煌々と明るく光るダイニングから世那がひょこっと顔を出す。
良かった。聞かれてないみたいだ。
「…あれ?諒二は?」
ダイニングに諒二の姿が見えない。
代わりにあるのは
「…で、なんでいるの」
「…」
「…ねえ」
「美味い」
表情一つ変えず黙々とカレーライスを口に運ぶ黒い龍の姿。
「…美味い?」
「…ん」
「そりゃどうも」
これでも驚いているのだが。
相手の様子があまりに淡白なもので、私も大袈裟なリアクションを見せることは何か憚られた。
「『勝手に帰るな』」
「…え?」
「柚からの伝言」
「え、あ、うん」