伝説に散った龍Ⅱ
Ⅷ/暴走
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「…芹那」
「うん?」
「…や、何でもない」
そう言って気まずそうに私から視線を外すのは、鮮やかな青い髪。
染め直したかな。前より綺麗に入ってる気がする。
「…なあに?柚」
わざとらしいほど優しい声が出た。
そんな私に、柚がゆっくりと視線を戻す。
「…普通なんだな、案外」
「なにが?」
「……嫌われたかと」
「え、私に?」
「…ん」
ーー黒龍の倉庫。
ここに、普通に来るようになって今日でちょうど一週間が経つ。
伊織と同じ時間に学校を出て
近藤の単車と同じ速度で走る車に乗って
正面の入口から倉庫に入る。
まだ慣れないけど
悪くない生活だなと思う。
「…俺らが無理矢理、黒龍に入れたようなもんだから」
「…」
「危険な目に遭わせるかもしれない」