タイムカプセル。
アプリの通話音が制服のポケットで鳴り響く。
「…もしもし」
ボールを持ち、またゆっくりとドリブルをつく。
『もしもし?杏?どこにいるの?』
「あー…地元の公園」
『公園?なんで?』
「ちょっと用事がね」
ドリブルはできるのにな…って当たり前か。
『杏もファミレス来ようよ。クラスのみんな殆ど来てるよ』
「そっか…じゃあもう少ししたら向かうよ」
ドリブルをつきながらコートの隣に生えている木を見つめる。
『やった!じゃあ待ってるね!早くね!』
「うん」
電話を切ると、スマホをポケットに入れドリブルを数回、
「最後」
そして放ったボールは綺麗なアーチを描き、リングに当たる事無く、シュッと音を鳴らせてゴールに入った。
「懐かしい……この瞬間の気持ちが大好きでたまらなかった」
そして、いつもこのゴールにゴールすると振り返った。
『ナイシュー』
祐之介がとびきりの笑顔で笑ってくれていた。
私が部長になれるまで成長できたのはきっと半分以上は祐之介の笑顔のおかげだ。
あの笑顔が見たいが為に何千球とゴールに放ってた。