タイムカプセル。
「泣くなよ」
「当たり前に泣くでしょそこはっ」
ハンカチで涙を拭きながらブランコを立ち漕ぎする祐之介を睨む。
「そうか?そんなに泣く?んな地元一緒なんだし会おうと思えばいつでも会えるだろ」
「ちゃんと全員が揃って会うなんてきっと最後だったんだよ?
泣くに決まってるじゃないっ」
「いや、体育館でお祝いなんだから夕方にまた全員会うじゃん…」
「だーけーどーさー」
「はいはい分かった分かった」
そう言ったと同時に祐之介はブランコからジャンプして降りるとベンチにいる杏の隣に腰を下ろすとネクタイを片手で緩めた。
「あ、ネクタイちょうだい!」
「だーめ、合格発表の日に着ないといけないだろ」
「あー、そっか…そう言えばそうだね」
自分が着ている制服を見つめる。
最初は制服に着させられていたのに、今じゃあちゃんと着慣れた制服。
色も褪せて少し古びた。
あ、セーターに穴空いてる。
そりゃ3年間着たんだもの、汚れて当たり前か。
それがあと1日しか着ないんだ…。
「…3年ってあっという間だったね」
「そうだな、早かったなー」
「高校生もあっという間だったねって言うくらい早く終わっちゃうのかなー?」
「どうだろうな……でもきっとあっという間と思いながら思い出は多いよ今の俺たちみたいに」
右手に杏より少し大きい祐之介の手に包まれ、温もりと安心が生まれる。
「そっか…そうだね、3年間あっという間だったけどいっぱいいっぱい思い出ができたもんね」