タイムカプセル。
だから、引退して受験生になった杏たちの進学先が違ったことに戸惑いが無かったとは言えなかった。
「…もう杏たち同じ学校じゃないんだね」
「まぁ…俺女子じゃないから杏の学校行けないし」
「だって…あの女子校に行くことが杏の長年の夢だったから」
近所のお姉ちゃんが通っていた公立の女子校。
制服が可愛くてキラキラ見えて、いつか絶対あの学校に行くんだと小さい頃から当たり前の様に思っていたから受験校なんて一択しかなかった。
「うん、知ってるよ。
杏のずっと側にいたから知ってるよ」
たとえ志望の女子校と正反対に位置するバスケ強豪校の公立の共学校に祐之介が志望したとしても。
「ねぇ、祐之介」
「ん?」
ベンチから立ち上がりカバンからスコップを取り出した。
「タイムカプセル…埋めよう?」
「…うん、埋めるか」
振り返った時にまだベンチに座っている祐之介の表情は卒業式には見せなかった何故か辛そうな表情だった。
「どこに埋める?」
「バスケットコートの隣にある木の下に埋めない?」
「そうだな、俺たちはバスケットコートが始まりだもんな」
「うん、だからできるだけバスケットコートの近くに埋めたい」
「…杏、ちゃんと掘れよ〜」
「ゆ、祐之介もでしょー!」
左手にスコップ、右手には祐之介の少し大きな手を繋いで目的地に歩く。
「祐之介…手もっと大きくなるんだろうね」
「…成長期だからな」